フルマラソン完走後でもダメージを残さない食事と身体のケア
2017.05.26(最終更新:2023.08.22)
フルマラソンを走った方は楽しかったですか、それともつらかったですか?
自己ベストを更新できた人も、失敗レースだった人も、長いレースが終わると安心して気が抜ける人も多いと思います。
でも、ちょっと待って!終わった安堵感も分かりますが、ラン後のケアはとても大事です。走った後に飲むあの美味しいビールは身体に良いのだろうか?ケアって何をしたらいいのか?きちんと知りたいレース後の過ごし方をお伝えします。
肝臓にある3つの機能
マラソンを走った直後の身体はエネルギーが不足していて、脱水と空腹に近い状態だと言います。この状態のときに一気にアルコールを摂取してしまうと血中アルコール度数が高くなり、酔いが早くなったり、悪酔いに繋がったり、場合によっては急性アルコール中毒を引き起こす可能性があります。
ここで特に知っておきたいのが肝臓の働きです。肝臓には大きく3つの働きがあります。
- ランニングで必要なエネルギー(グリコーゲン)を生み出す工場
- アルコールを分解(解毒)する機能
- 痛めた筋肉を修復するメンテナンスステーション
ランニング中はグリコーゲンを生成し、工場ラインがフル稼働状態となります。そして、ランニング直後からはメンテナンスステーションに切り替わります。ところが、このタイミングでアルコール摂取してしまうと、アルコールの分解を優先してしまうのです。つまり、回復が後回しになってしまいます。
結果、回復を遅らせてしまい、筋肉痛を促進させ、さらには、故障の原因を作り出し、免疫力が下がって風邪を引きやすくさせてしまうのです。 健康のために走っているはずなのに、身体を傷つけることになってしまいます。
適切なランニング後のビールの飲み方
やはり、ランニング後のアルコールはダメなのかというと、適切なタイミングと量を守れば、お酒=悪ということではないようです。そのルールをいくつかご紹介します。
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アルコールの前に必ず十分な水分補給をすること
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着替えなどを先に済まし1時間以上の時間をあけてから飲む
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必ず食べ物と一緒に飲む
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適量におさえる(個人差はあるが中瓶一本までが目安)
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大会前でも無理に我慢して断酒しない
疲れた身体に飲みすぎは禁物です。自分に合う量を知り、身体のメカニズムを理解することで、適切にマラソン後のアルコールを楽しみましょう。
ランニング後に食べる最適な食事
運動後の食事は大変重要です。失われた栄養素を摂取し、傷ついた筋肉に栄養を与えることで、筋肉の修復の手助けを素早く行ない、早い回復を促します。ダイエットとしてランニングを取り入れている人も、レース後は過度な食事制限をせず、身体にとって必要な栄養素をしっかり取るように心掛けてください。
・運動後30分以内 内蔵機能が低下している運動直後(30分以内)は、栄養価が高く消化吸収のよい食べ物を摂ると良いと言われます。例えば、牛乳、豆乳、乳飲料、果汁100%ジュース、バナナなどの糖質が多い果物、ビタミンやクエン酸が含まれる柑橘類、プロテイン、液体もしくはゼリー状のスポーツドリンク、栄養補助食品など身体がダメージを受けている状態でも素早く栄養補給できるものを摂取しましょう。 |
・運動後30分~2時間以内 内臓機能が落ち着いてきたら(30分~1時間程)、たんぱく質、糖質(炭水化物)、ビタミン・ミネラルを中心に、栄養バランスのとれた食事をよく噛んでゆっくりと食べましょう。 |
・翌日以降の食事 運動強度と回復の個人差があるので、胃腸の調子を見極めた上で、食事のメニューを考えると良いでしょう。基本的には消化の良いものを心掛け、バランスの良い食事が一番です。引き続き、回復を促す良質なタンパク質と、ビタミンB群、アミノ酸を意識して摂取すると良いでしょう。 |
レース直後におこなう身体ケア
マラソンでゴールしてからその日寝るまでの間の過ごし方は、ケガを予防したり、身体の回復を早めるためにとても大切です。
フィニッシュするとホッとしてつい疎かになってしまうのがレース直後の身体のケアです。免疫力が低下しているこのタイミングで初期対応を間違うとケガを誘発したり、風邪を引いたり、回復を遅らせてしまうので注意しましょう。
・汗冷えに気をつける フィニッシュ直後から大量にかいた汗が身体を冷やす「汗冷え」が起きます。風邪を引くなど体調不良の原因になるので乾いたタオルで汗を拭き、上着を着るなど対策を取りましょう。 |
・アイシングをする 長時間酷使し熱を持った筋肉や関節をケアするには冷やすことが重要です。冷却系の湿布を貼ったり、冷水に浸かったりなど、運動後はとにかく冷やして筋肉をいたわりましょう。 |
・入浴 アイシングを行なった後にゆっくりと入浴しましょう。出来るだけ湯船に浸かることで筋肉をリラックスさせると回復に効果的です。 |
・寝る前に足を上げる 長い距離を酷使した足と身体の血流を良くする効果があります。翌日の足のむくみにも効果があるので特に女性の人は試してみてください。 |
レース数日後からの身体ケア
レース直後や翌日などに自己流のマッサージを行う人が見受けられますが、あまりオススメしません。筋繊維が壊れている状態での直接的な治癒行為は筋肉をより痛めてしまう可能性があるからです。筋肉の回復に努めるために、プロの手を借りたり休息、栄養摂取を十分にしましょう。
追記(2018.2.19) 筋繊維が壊れている状態で必要なのは筋繊維の修復です。 血行促進が期待できるマッサージや鍼灸は修復機能を賦活する場合があります。 |
内臓疲労の症状
レース後は筋肉だけでなく内臓も激しくダメージを受けています。内臓の疲れは目で見ることができないので、分かりにくいものですが、次のような症状が続く場合は、内臓疲労を起こしている可能性があります。
- 顔や手足がむくむ
- 食欲がない。胃もたれを起こす
- 体がだるく、やる気が起きない
- 寝ても疲れが取れない
- 下痢のようにお腹の調子が悪い
肉体疲労にはビタミンB群。内臓疲労にはアミノ酸
内臓疲労の回復には十分な栄養補給が重要です。必要な栄養としては、肉体疲労にはビタミンB群が良いですが、内臓疲労にはアミノ酸が良いと言われます。脂っこいものは避け、消化の良いメニューに変更してみるなどしてみてください。
筋肉のケアは14日間
マラソンランナーを調査した研究によると、筋肉の炎症や筋繊維が回復するまでにフルマラソン後14日間かかるそうです。これは、レース後の14日間は完全に回復に当て、走力アップを目的としたランは控えることを意味します。
フルマラソンなど長距離走が身体に与える負担は決して小さくありません。せっかく頑張って完走しても、その後のケアを怠って、体調を崩したり、怪我をしたりしては意味がないのでラン後のケアはしっかりしましょう。
参照元:「Muscle fiber necrosis associated with human marathon runners」
まとめ
レース直後
- 水分補給と栄養価が高く消化吸収のよい食べ物を摂る
- 汗冷えに気をつけ、アイシングと入浴、睡眠をしっかり取る
レース1〜2日後
- 完全休養(出来る限りカラダを休める)
- ゆったりと入浴し、よくストレッチを行う
- 免疫系の回復を早めるフルーツ、筋肉の回復を助ける炭水化物、タンパク質をとる
※軽いマッサージを行うと筋肉の回復を早めるが、強めのマッサージは厳禁。
レース3〜7日後
- 走ったとしても、距離は3〜6km程度が望ましい
- やや強めのマッサージを行っても良い
- バランスの良い食事を心掛ける
※あくまでも脚の血流を促進するためであり、ペースはゆっくり
レース8〜14日後
- 低強度〜中強度程度のランニングをする
- レース後の痛みなどが引かない場合は、専門医の診察を受ける
- まだ回復期だということを意識した生活を送る
※焦らずにゆっくりと元のトレーニングに戻していく
フルマラソン完走が珍しくなくなってきた昨今ですが、だからと言って体へのダメージが減った訳ではありません。筋肉、内臓、メンタルに与えるインパクトは大きいので、きちんと回復させる必要があります。
人間の身体を作り出しているのは「食事」です。正しい知識と適切な判断をして、ケアを行ってください。