サブ4を達成するための『モノ・カラダ・プラン』モノ編(シューズ選び)

サブ4を達成するための『モノ・カラダ・プラン』モノ編(シューズ選び)

サブ4を達成するための『モノ・カラダ・プラン』モノ編(シューズ選び)

2018.07.06(最終更新:2023.08.22)

“一人前のランナーとしての勲章”と呼ばれる「サブ4」。42.195kmのフルマラソンを4時間以内で走りきることを指すこの言葉は、マラソンを始めた人の最初の壁、あるいは最初の目標とされます。
 しかし、サブ4を達成するのは、ランナーの25%程度という統計データもあり、決してやさしいものではありません。
 そこで、トップランナーのトレーニングパートナーとしての経験もあり、市民ランナーに長きに渡って指導経験もある白方健一さんに「サブ4」をテーマにお話を聞きました。

 

白方健一コーチのプロフィール

Top GearRCの代表/ヘッドコーチ トップギアインターナショナル合同会社 代表社員 ロンドン五輪マラソン代表藤原新選手や吉田香織選手(北海道マラソン優勝)トレーニングパートナーの経験を持つ。自らもこれまでフルマラソン50回以上走りフルマラソンだけでなく、ウルトラマラソンやトレイルランにも挑戦している。東京を中心に神奈川、広島で2007年よりランニングクラブをスタートし、ランニングクリニックなどを含め年間のべ約2000名を指導する経験を持つ。

 

サブ4を目指す背景

テーマは「サブ4」です。統計的な数字から見ても、決して楽なタイムではないですよね?

白方:この数字の背景から説明した方が良いと思うのですが、東京マラソンに代表されるように今のマラソン大会の制限時間は6〜7時間が主流です。ですが、東京マラソンが出来る以前は5時間というのが一般的で、参加者のレベルが今より高かったと言えます。

競技人口の増加も影響ありますか?

白方:もちろん、あります。制限時間が長くなったことで以前に比べてチャレンジしやすくなりました。それだけ裾野が広がったので業界的にも良いことだと思います。以前は、参加者のレベルは高かったですが、参加人数も少なかった。マラソンブームのおかげで、一部の人のスポーツでなくなったことに加えて、タイムでいうと5〜7時間で完走する人が一気に増えたことが要因と考えられます。

サブ4を達成できる人とできない人の違いとは

まずは完走。その次の目標が「サブ4」というステップがあると。でも、すぐにサブ4できる人と、なかなかできない人がいますよね? そこにはどんな違いがあるんですか?

白方:いくつか理由があると思っています。運動経験があるか、体重の問題、練習の量と質のバランス、そもそもトレーニングメニューは合っているか、大会に向けた準備の仕方、本番力など、挙げたらキリがないですね(笑)。

そこを解説していただきたいのですが…

白方:ですよね。わかりやすくキーワードにすると『モノ・カラダ・プラン』という分け方をよくします。

 

 

サブ4を達成するための『モノ・カラダ・プラン』

『モノ・カラダ・プラン』って何ですか?

白方:「サブ4」に必要な要素を大きくこの3つに分ける考え方です。『モノ』は道具です。シューズがその代表ですね。『カラダ』はケアや身体のバランス力、コンディショニングなんかも含まれます。『プラン』はマネージメント力です。トレーニングメニューの組み立てや本番の走り方などです。

 

 

自分の足にフィットするシューズの選び方


なるほど。今日は、その中で『モノ』について教えてください。

白方:はい。一言で表すとシューズの選び方です。別の言い方ではフィッティングですね。自分の足にフィットしたシューズを履いているか?という点です。

白方流フィッティング法はあるんですか?

白方:僕の場合、まずはかかとです。ヒールカップが合っているかを重視します。というのは、かかとのブレはバランスを崩して故障を誘発します。怪我が多い人はオーバープロネーションしている人が多く、それを補正する機能としてヒールカップのフィッティングは重要だと思っています。 着地するとき通常、足の外側から接地して体重を乗せ、最終的には母指球からつま先へ荷重が移動します。このとき、足首が内側に倒れ込むことで着地時の衝撃を緩和する動きを『プロネーション(回内)』と呼びます。これは人間の足にもともと備わっている機能なんですが、通常より大きく回内してしまうことをオーバープロネーションと言い、怪我に繋がります。

かかとが大きい人や小さい人など、いろいろいますもんね。その次はどこを見ますか?

白方:サイズです。サイズとは「長さ」「幅」「高さ」の3つです。感覚的にはキツすぎない、ユルすぎないってことなんですけど、「長さ」は、かかとをトントンと合わせて足先が指一本分空くくらいとよく言われていて、それでいいと思います。次は、「幅」と「高さ」です。

ペッタンこな人とか、甲高の人とか、ここもいろいろですよね?

白方:「日本人は甲高幅広だ!」ってよく言うじゃないですか。これって本当なのか?って疑ってかかった方が良いと思いますよ。実際に測ってみるとそうでもない人って少なくなくって、思い込みというか先入観でシューズを合わせている人がいるんです。

「幅」や「高さ」をチェックする時の注意点はありますか?

白方:履いてみて幅や高さのサイズが合わなかったとき、例えばワイド幅や細身のものを履いてみると思うんですけど、ラスト(木型)を替えソールの幅(ワイズ)が変わるタイプとワイズは変えずに生地の量=甲の高さが変えるタイプとあります。これはメーカーさんによって違うので、よく見た方が良いですよ。

ブランド名で決めるとか、デザインで決めるというのはダメですよね?

白方:オススメしないですね。先ほど述べたように幅によってソールの幅(ワイズ)が変わるタイプのメーカーは良心的と言えるかもしれませんね。シューズは、メーカーによってラストって違うんですよ。自分の足の形に合わなければ別のメーカーを試した方がよいと思います。それからシューズの底が曲がる位置もチェックして欲しいです。

シューズが屈曲する場所ということですか?

白方:そうです。ちゃんとつま先が曲がるかどうかです。人間の足は本来つま先が曲がるようにできていますよね。それに合わせて曲がるのかどうか、足入れしたときに屈曲のフィットも見ると良いと思います。でも、そもそもですね、シューズ選びのゴールは、シューズへの依存度を低くすることなんです。

シューズ選びのゴールは、シューズへの依存度を低くすること?

白方:シューズが余計な仕事をさせない、余計なブレを起こさせないという言い方が適切かもしれませんが、走る行為の主導権はあくまで自分であって、シューズが自分にストレスを与えないことが『モノ』に対する基本的な考え方だと思うんです。

自分の足を“正しく知る”って大事ですけど、それが難しい(笑)

白方:ある意味、マラソンって自分を知るスポーツだと思っているんです。シューズ選びでもそうですし、フォームも、メニューも、身体作りも、自分を知ることが大事です。

自分を知る手段として、『モノ』の場合、どうやったら知ることができますか?

白方:シューズ選びの場合だと、専門店に行く。決してWEBでポチッと買わないことです。すでに自分に合ったシューズが分かっていて、同じものの2足目、3足目とかならWEBで買っても良いですけど、フィッティングをしないで買うのは避けて欲しいです。結構、そういう人がいるんですよ(笑)

便利な世の中になりましたからね。

白方:きちんとお店に行って、試履きして、かかと、長さ、幅、高さ、屈曲のポイントをチェックして欲しいです。

 
 

 

 

トレーニングによってシューズを履き分ける


他にシューズ選びのオススメはありますか?

白方:「シューズチェンジ」ですかね。トレーニングメニューによって、あるいはトレーニング強度によってシューズを替えるような用途用法によってランニングシューズを履き分ける「シューズチェンジ」は、トップランナーは実践していますし、経済的な負担はありますけど、意識して欲しいですね。

サラリーマンで言えば、毎日同じ革靴を履くと消耗が激しく、寿命も短くなるから履き替えるとか、女性であれば服装やTPOによって履き分けるとか、普段の生活で実践していますもんね。

白方:そうなんです。いつも同じシューズを履いて走れば集中的に消耗するのでシューズの寿命は短くなります。シューズに休息日を設けると、シューズ寿命を延ばすことにも繋がります。経済的にもお得だと思うんですよね。また、適材適所なシューズを履くことは、足へのダメージを軽減させ、ケガを防ぐことにもなります。

さすがに市民ランナーがトップランナーのようにたくさんのシューズを揃えるのは難しいと思いますが、市民ランナー向けの「シューズチェンジ」は何足あればいいですか?

白方:そうですね…、トレーニングメニュー別に、スピード用、通常用、LSD用など3種類程度を揃えておくと良いかもですね。これからサブ4を目指すという人のシューズ選びのポイントは、痛みがなく安全であること、足への負担を軽減させることを重視して、怪我をしないよう努めて欲しいと思います。

用途用法によってランニングシューズを履き分ける「シューズチェンジ」は、トップランナーは実践していますし、経済的な負担はありますけど、意識して欲しいですね。

 
 

 

 

まとめ 

いつかはサブ4! そう思っているランナーは多いと思います。白方さんによると、4時間10分を切ったくらいのランナーがもっともサブ4に悩む大きな壁にぶち当たるとか。そのとき見直してみてください。シューズはあっているか? 「シューズチェンジ」を取り入れているか?

『モノ』に対する捉え方ひとつでも、サブ4の可能性は高まるかもしれません。次回は、サブ4するための『モノ・カラダ・プラン』の『カラダ』です。白方流コンディショニング法とは?