ゆっくり走るのがジョグではない! シューズを履き分けて、走りに緩急をつければもっと気持ちよく走れる

ゆっくり走るのがジョグではない! シューズを履き分けて、走りに緩急をつければもっと気持ちよく走れる

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ゆっくり走るのがジョグではない!シューズを履き分けて、走りに緩急をつければもっと気持ちよく走れる

2021.01.13(最終更新:2023.08.22)

 

“ジョグ”というと、ゆっくりだらっと、なんとなく走ってしまう人も多いのではないだろうか。調子が上がらないけれど、月間走行距離を稼ぎたいとかスピード練習が苦手など理由はそれぞれ。でもそんなジョグをもっと有意義なものにするには、実は走り分けやシューズの使い分けが有効なのだとか。そのポイントを下門美春選手に聞いてみた。

ジョグにはジョグ用のシューズがある

ジョグ用のシューズとして『ラベナ』(左)、『アドレナリン』(右)の2足を履き分けている下門選手。

プロランナーとして活躍し、フルマラソンのパーソナルベルトは2時間27分54秒の下門美春選手。YouTubeでは惜しげもなく練習メニューを公開してくれているが、驚くことにジョグの割合が多い! 速い選手は負荷の高いトレーニングが多いのかと思いきや、どうやら違うらしい。ジョグをするのにまずシューズ選びが重要なのだそう。

下門選手 ジョグ用のシューズの選び方のポイントは2つあります。ひとつは、アウトソールのクッション性、もうひとつは安定感です。クッション性というのは、衝撃を吸収してくれる低反発なものです。ロードを長距離、長時間走ると、膝や足首の関節に疲労がたまったり、痛みを感じたりすることがあります。そうした疲労や故障から足を守るため、クッション性を重視しています。そしてもうひとつ、安定感というのは足元が左右にぶれないということです。足元が左右にぶれると、それを太ももや体幹で修正しなくてはならなくて、その分疲労につながります、とくに筋力の少ない女性は、足元がぶれたとき体幹で修正できないと、左右に体がぶれてしまってそれを太ももで支えるなどして保とうとします。そういったブレがなければ、動きのロスが少なくなり、疲労や故障といったリスクを圧倒的に減らすことができます。

リカバリーとフォーム修正のためのジョグには『アドレナリン』

スピードによって路面からの衝撃の吸収性が変わる独自のクッション素材を使っているため安定した走りができる

かかと周りのクッションがしっかり効いていて、足が包まれているのも安定した走りができる要因


スピード練習に比べてペースを落とせばジョグというわけではない。下門選手のジョグには2種類ある。ひとつはスピード練習とロング走など2日連続で負荷の高いセット練習をした翌日やレース翌日のリカバリーのためのジョグ、もう一つはスピード練習などのポイント練習に向けてコンディションを上げていくためのジョグだ。そしてその2種類のジョグでシューズも履き分けている。まずはリカバリー用のジョグで履く『アドレナリン』について聞いてみた。

下門選手 『アドレナリン』の特徴は何といってもクッション性があり、とても柔らかく低反発であること。かかと周りのクッションもしっかりしていて足を守ってくれる感覚があるので安心して履けます。また、左右のブレを抑えてくれるGUIDERAILSパーツがアウトソールのサイドにあることです。スピード練習などでぐちゃぐちゃっと崩れてしまったフォームを見直したり、ポイント練習の直後で疲労があったりして、1㎞6分くらいのジョグをするときに履きます。1㎞6分だととてもゆっくりですが、決してだらだら走るのではなく、着地は正しいか、後ろに足を蹴り上げていないかなどフォームを見直す余裕があるスピードで走るのがポイントです。

レース感覚により近づくためのジョグは『ラベナ』で

軽量でほどよい反発があるので足離れがよいのでペースを上げたジョグに最適かかとの内側と外側にあるGUIDERAILSパーツによって足首が足の内側や外側に倒れ込んでしまわないように、サポートしてくれる

ポイント練習に向けて少しペースを上げながら行うジョグ。これには『ラベナ』を履くことにしているという。ソールの薄さ、反発などは実は『アドレナリン』とは正反対の性格のシューズなのだ。ブルックスのシューズカテゴリーではジョグというよりスピード練習向きのシューズだが、これをあえてジョグに使うという下門選手の心はいかに。

下門選手 『ラベナ』はソールが薄くて、反発があるので地面の接地時間が短くて足離れがいいシューズです。本来はスピード練習などに使う人が多いシューズですが、私はあえて少し速めのペースのジョグで使います。ペースでいうと1㎞4分半くらい。レースのアップやポイント練習などのアップにも使います、また多少疲労があっても、リズムよく速めのペースでジョグをしたいというときには最適。着地から次の一歩への動きがスムーズにできます。少し速いペースで走ったとしても、左右のブレを抑えてくれるGUIDERAILSパーツがあるので、足元や体が左右にぶれず、まっすぐロスなく走れるのもこのシューズのいいところです。

ジョグは走りの感覚を研ぎ澄ます重要なトレーニング

ほぼ毎朝、6時前後にはジョグをしにいくという下門選手。

ジョグはポイント練習に比べてペースが遅いので一見楽そうに思えるけど、実はトレーニングの中で重要な意味がある。だからこそ下門選手は1週間のトレーニングメニュー中で半分以上の時間をジョグに費やしているのだ。

下門選手 ジョグは日々のルーティンで、だいたい60分をベースに、その前後くらいの時間を費やしています。これは前日の疲労抜きのためでもあったり、体の動きを確認するためであったり。毎日することで、自分の調子がその日どうなのかがわかってくる。もちろん行きたくないときもあります。”60分、長いな”と。でもとりあえず20分でいいからと思っていくと徐々にその気になる日もあれば、乗らないも日もあって、そういう日は割り切って休養にするときもあります。こういう自分の感覚は続けていればこそ身につくもの。ジョグは自分の体の感覚を鋭く研ぎ澄ましてくれる、なくてはならないトレーニングメニューのひとつです。ペースがゆっくりだと端から見るとだらだら走ってるように見えるけれど、私にとってその日の課題を意識できる、考えながら走れるペースです。この大切なトレーニングを支えてくれる『アドレナリン』と『ラベナ』の2足のシューズは相棒のような存在です。


下門 美春選手

栃木県出身。片岡中時代はソフトボール部に所属し、栃木県立那須拓陽高校で本格的に陸上を始める。2年、3年時は全国高校駅伝に出場。高校卒業後、第一生命に入社し、2011年の第31回全日本実業団女子駅伝で優勝を経験。翌年退社し、約2年間のフリーター生活を経て、2014年にしまむらに移籍。2017年よりニトリへ。2018年5月にプロに転向し、7月のゴールドコーストマラソンでは4位と健闘(日本人1位)、9月に「ブルックス」と契約。パーソナルベストは10000m33分04秒、ハーフマラソン1時間11分48秒、フルマラソン2時間27分54秒。2021年1月からプロマラソンランナーとして埼玉医科大学女子陸上部所属。