【管理栄養士監修】筋肉を壊さずに運動して痩せる効果的なダイエット方法

【管理栄養士監修】筋肉を壊さずに運動して痩せる効果的なダイエット方法

プロに聞く、ランニングシューズの正しい使い方 読む 【管理栄養士監修】筋肉を壊さずに運動して痩せる効果的なダイエット方法 1 分 ダイエットの敵を撃退!確実に脂肪を減らす方法とは?

【管理栄養士監修】筋肉を壊さずに運動して痩せる効果的なダイエット方法

2017.10.23(最終更新:2023.08.22)

運動と食事には密接な関係があるというのはよく聞く話ですが、具体的にどのような関係にあるのか、体へはどんな影響があるのかを理解している人は少ないのではないでしょうか。
そんな疑問をもとに管理栄養士で公認スポーツ栄養士の小嶋先生に様々な疑問をぶつけてきました。今回は、そんなインタビューの第1弾になります。

 

小嶋理恵子先生のプロフィール

アスリートにトレーニングプログラムを提供する「Unit」所属の管理栄養士であり公認スポーツ栄養士。効率的で健康的なカラダづくりを食事・栄養の側面からサポートしている。

 


 

運動する前にはエネルギー補給が必須

ダイエットとは「減量」つまり、体脂肪を減らすことを目的として行われますが、「運動」と「食事」を組み合わせて行うことがとても重要だということをはじめに伝えておきます。運動と食事のどちらかが欠けては「健康的な」ダイエットの成功にはつながりません。また「運動」も「食事」も正しい知識を持って正しい手法で実践することが大切です。ぜひそれぞれの専門家からのサポートを積極的に取り入れていただきたいと思います。

運動とダイエットについてお聞きしたいのですが、なるべくお腹を空かせた状態で走った方が、飢餓状態になって脂肪は減りますか?

もちろん、ジョギングやウォーキングといった低強度の運動を行えば、脂肪は減ります。
ただ、空腹状態で“絶対”に走ったり、運動したりしてはいけません。

え?なぜ空腹状態で走ってはダメなんですか?

なぜなら、運動するためにはエネルギーをどこかから持ってくる必要があります。空腹状態で運動してしまうと、自分の身体を分解して運動のエネルギーを生み出していくので、筋肉も分解されるという状態が起こるからです。

筋肉って壊れるんですか!?筋肉を壊さずに運動する方法はないんですか?

普段でも、筋肉は分解されています。そして筋肉を分解せずに運動する方法は残念ながらありません。ですが、できるだけ分解を避ける方法はあります。
人間の身体には、運動を行うときに体内の「グリコーゲン」や「脂肪」、筋肉の「たんぱく質」を分解してグルコースを作り、エネルギーとして使う仕組みがあります。
運動前に食事から身体を動かすためのエネルギーなどの栄養素をしっかりと身体に補充してから、運動を行うことで、筋肉の分解を少しでも防ぐことができるようになります。

 

運動エネルギーの源「グリコーゲン」の摂り方

食事をするとすぐにグリコーゲンになるんですか?

残念ながらなりません。「グリコーゲン」とは、糖質が消化されてグルコースとなり、体内に吸収され、再合成されたものです。ですからある程度の時間は必要になります。また、何を食べてもすぐにグリコーゲンになるわけではないのです。
糖質は皆さんの良く知る「炭水化物」の構成成分の一つで、ごはんやパン、麺類など「主食」に当たるもの、イモ類や果物などに多く含まれています。
また、糖質をエネルギーへ変える過程でビタミンやミネラルが必要となりますので、肉や魚、野菜といったおかずも併せて食べる必要があります。

食後何時間ぐらいでグリコーゲンになるんですか?

食べたからと言ってすぐに栄養になるわけではありません。胃から出て腸までいってはじめて吸収されます。
胃はただ吸収しやすいように分解しているだけなので、腸に送り込まれないと身体には吸収されないのです。胃から排出されて腸で吸収が始まるのが食後3時間後とされているので、しっかり食べた後なら3時間ほど時間をあけてから運動した方がよいかと思います。

朝走る場合でも夜走る場合でも食べてから走った方がいいですか?

食べていただいた方がいいですね。特に、朝走る場合は朝早く起きて何かしら食べてから、なんでもいいです。バナナ一本でもいいですし。 空腹状態で朝走ったり運動したりするのは一番危険だと思います。
なぜなら夕飯を夜8時に食べていた場合、起床時間が朝の6時となると10時間も何も食べていない状態が続いていることになります。つまり、朝には身体は軽い飢餓状態になっているのです。そこからさらに何も食べない状態で身体を動かそうとすると先ほども伝えました通り、身体を分解して運動するような形になってしまいます。
また夜走る場合でも、前の食事、昼食になりますか、を食べてから3-4時間以上時間が空く場合には、間食として軽く食べてから身体を動かすことをお勧めします。

朝起きてからの運動は何かしら食べてから動かないといけないということですね。

そうですね。 朝の運動は必ず食べてから運動してください。
朝起きてすぐに食事を食べることが難しいのであれば、果物や野菜を合わせたスムージーのようなものや、コップ一杯のオレンジジュースを飲むだけでも大丈夫です。寝起きは誰しもが軽い脱水状態なので水分と糖質を補給してから走ってください。

そして走った後になるべく早い段階でしっかりとした朝ご飯を食べれば、運動中に使ったエネルギーなどの回復を助けますので、あまり身体を分解せずに運動することができます。

 

痩せるためにベストなランニングの時間

今、注目されているものに「時間栄養学」というものがあります。 今までは、健康になるために「何を食べたらいいのか」と食べ物そのものに注目していたのですが、それにプラスしていつ食べたらよいのかという「時間の概念」を追加したものが時間栄養学です。

それによると身体には遺伝子レベルで体内時計が備わっており、約25時間の日周リズムを作っています。地球は24時間サイクルで活動していますので、朝食、朝の光で時計をリセットしながら24時間の日周リズムを保っています。この体内時計は体温や血圧、睡眠やエネルギー代謝などの生命活動をはじめ、その日の気分や体調、スポーツ活動などの身体活動をコントロールし、自身の健康管理を行っています。つまり、身体の日周リズムにあった生活をすると身体にとって効果的に筋肉をつけることもできるし効果的に痩せることもできると言われているんですね。

例えば特定保健指導の現場でも、食事の内容に気を付けていて、食事の量もそれほど多くないのに、夕食を23時過ぎと夜遅くに食べるなど、生活リズムが崩れていることでメタボリックシンドロームになってしまったという方が多く見受けられます。そういう人を含めて、生活リズムを整えただけでメタボリックシンドロームが解消されたという事例が何件も報告されています。

では時間栄養学的には何時頃にランニングするのがいいですか?

時間栄養学の観点からですと、「ベストな走るタイミング」は夕方の15~17時ぐらいになります。ちょうど中学校や高校の部活動の時間帯ですね。

運動機能は、体内環境を調整している内分泌・代謝系の変化に連動した日周リズムを示すと言われています。運動に必要なエネルギーを生み出す「脂肪」の代謝にかかわる甲状腺刺激ホルモン分泌は夕方で高くなり、肝臓、脂肪組織、さらに筋肉や心臓での脂肪分解を亢進し、運動持久力を高める働きをします。

つまり、筋力、敏捷性、持久力などの運動能力は1日の運動時刻によって異なり、夕方に運動を行った場合に特に優れた結果を残しています。

ですから走るのでしたら夕方がベストです。

社会人だと平日の夕方に走るのは難しいですね。

そうですね。平日は仕事で週末に集中して走るという方は、土日のお昼にバランスよい食事をしっかりと食べていただき、食後約3時間経った15時から16時くらいに走り出してもらうのがベストではないでしょうか。

朝か夜に走りたい!という人はどうしたらいいですか?

朝早く起きられるなら、夜より朝に走る方がいいです。

なぜなら、19時に仕事が終わって、軽く何か食べてから走ったとしても、夕食のタイミングは21時~22時ごろと遅くなり、さらに、寝る時間もどんどん遅くなってしまいます。

夜遅い食事と、夜遅くの就寝の2点は身体を作り上げていく上で、あまり効果的とは言えません。

人間の身体は、日中はエネルギーを消費するように働き、夜はエネルギー源である脂肪をため込むように働くため、20時以降の遅い時間での飲食は脂肪を蓄積しやすいです。また、身体を作るために必要な成長ホルモンの分泌量が高くなる時間帯は「22時から夜中2時」で、熟睡しているときに活発に働くと言われています。ですからその時間帯はできたら寝ていただきたいのです。この働きは20代の若い方でも90歳のおじいちゃんでも一緒です。

「走ってきたから」と言って22時過ぎに夕飯を食べて、「食べた後2時間くらい起きてた方がいいんだよね」と言って日が変わってから寝る方がいます。そういう場合は走らなくていいので早く夕食を食べて早く寝た方がいいのではないかなと思います。

栄養学的には22時には寝ていた方が良いんですか?

まず夕食を20時くらいまで、遅くても21時までには食べ終わっていることが理想です。21時までに夕食が終わっていれば、たとえ長いお風呂に入ったとしても、日が変わる前には寝られるのではないでしょうか。

夜に走った場合でも運動後に食事をした方がいいんですか?

走った後は疲れているのでシャワー浴びてさっさと寝たいという人も多いと思いますが、運動するということは身体を分解していることなので、少しでも食事で補った方がいいです。

朝走るのがベストだけど、夜に走るなら22時には寝れるように時間を調整するわけですね。

そうですね。

「起床時間」「1日3回の食事時間」「就寝時間」の5つの時間を意識し、日周リズムに合わせた規則正しい生活を送ることが健康増進につながります。

やることがたくさんあり、なかなか寝られない場合もあるかとは思います。仕事や自分のやりたいことをしっかりとやり切れるのは健康な体があってこそ。ぜひご自分の身体を大事に、寝る時間になったら寝る!を実践してみてください。

 

運動後にグリコーゲンを回復させて筋肉を減らさないようにしよう

運動後すぐに栄養補給したくても、食事の準備をしたり外食に行くとなるとどうしても30分を超えてしまうんですが、どうしたらいいですか?

その時にこそ間食を上手に利用してもらいたいです。
間食と言っても甘いお菓子のようなものではありません。運動後の食事は運動で使った「エネルギー」と筋肉を作るための「たんぱく質」をしっかりと補給することがポイントになります。
筋肉の超回復の時間と併せて考えると、運動した後は30分以内に「糖質+たんぱく質」を含む食事をしっかりと食べることが理想と言えます。

実際の食事として考えた場合、運動終了直後には、おにぎり、サンドイッチなどの手軽に食べられる糖質中心のもの、固形物を食べることが難しいようなら、100%フルーツジュースやダイエットタイプではないスポーツドリンクなどで糖質を補給する。そして、運動終了2時間以内に、しっかりとした食事を食べるという方法をお勧めします。間食を食べた場合には、2時間以内の食事では間食分の糖質を減らしてもいいかと思います。

身体を鍛える、筋肉を作ると聞くとすぐに「たんぱく質をまず先に食べないと!」と想像される方が多いように見受けられますが、まずは身体を動かすエネルギー源である「グリコーゲン」を回復させることの方が優先です。
初めにも話しましたが、身体を動かすエネルギーである「グリコーゲン」が不足すると、筋肉を分解してエネルギーにします。

ですから運動をした後は、まずはエネルギー補充が第一で筋肉中のグリコーゲンを補充しないと筋肉中のたんぱく質が減ってしまうんです。

運動後は糖質を補充しないと筋肉が減ってしまうとは驚きです。

はい。実はたんぱく質よりも糖質を摂って、エネルギーであるグリコーゲンを体内に戻すことが第一なんですね。
筋肉を守ろうとしたら消費エネルギー量に見合ったエネルギー量をまずは確保しましょうと。そうしないと筋肉を守ることはできないです。

やっぱり運動後はプロテインがいいんですか?

そうとも限りません。プロテインであれば糖質が添加されているものを選んでください。
プロテインだとあまり飲めないという方も多いと思いますが、そういう方はバナナや牛乳、ゆで卵などでもかまいません。そこから食事の支度をしていただいて、2時間以内にバランスの良い食事が食べられれば大丈夫です。

糖質補給となるご飯やパンの中にもたんぱく質は含まれています。
食品には、サプリメントのように単一栄養素だけではなく、糖質、たんぱく質、ビタミン、ミネラルと様々な栄養素が含まれていますので、あえて、運動後のたんぱく質補給のためだけに無理してプロテインを摂る必要はないかと思います。

 

運動後の食事は普段通りにバランスの良い食事をとることが大事

サプリメントで栄養を摂るのはどうなんですか?

あまりお勧めはできません。サプリメントというのは栄養補助食品と呼ばれ、ある栄養素を凝縮したものになりますので、単一の栄養素を摂りすぎるという弊害もあるんですね。基本的に1日3食をしっかり食べていれば身体に必要な栄養素はちゃんと摂れます。ですからあえてサプリメントを買う必要はないと思います。

普通に1日3食を食べていればたんぱく質は十分摂れるんですか?

とれます。

コンビニ弁当やサラダのみとかでも?

コンビニ弁当であってもたんぱく質は十分に足ります。ですが、脂質や塩分が多くなる傾向にあります。
サラダダイエットなど偏った食事をしていると難しいですね。。。

走った後にたんぱく質を摂ろうとして無理やり肉を食べる必要はないということですか?

普通の食事でたんぱく質は十分摂れます。定食屋のサバ定食とかでも十分です。白いごはんの中にはたんぱく質も含まれていますし、わざわざ肉とか魚の量を増やして取ろうとするとお金もかかりますからね。
体重1㎏あたり1gのたんぱく質が一日に必要な摂取量となりますので、体重60kgの人の場合60gです。

60gといったら多くなさそうですね。

お茶碗に普通に一杯のご飯(ご飯150g)でたんぱく質は3.6g摂れます。3食150gのご飯をちゃんと食べたとしたらそれだけでたんぱく質10.8gが摂れます。残りおかずとして使えるのが49.2gしかありません。
普通の卵1個(M玉 50g)で6.2g、豚もも肉一人分約80gで16.4g、鶏もも肉の皮付き一人分約80gで12.9gのたんぱく質が摂れますし、魚では、秋の旬はさんまでしょうか、さんま1尾約150gで19.4gのたんぱく質が摂れます。
朝に卵を1個、昼に豚肉、夜にさんまとメインとなるおかずをそろえただけで、42gのたんぱく質を摂ることができます。
あとおかずが数品あれば、もしくは牛乳コップ1杯には6.8gのたんぱく質が含まれていますので、乳製品をプラスしていただくだけで、あっという間に60gのたんぱく質は摂取できます。

運動してても、していないくてもそれくらいの量で十分なんですか?

十分です。
もちろんスポーツ選手は違いますが、約30分~1時間程度、低強度のランニングを週2回ぐらい行う方であれば、運動している日と運動しない日でたんぱく質の必要量はそんなに変わりません。肉や魚の量をあえて増やすほど、そこまでたんぱく質は身体に必要ではないんです。
また、たんぱく質を一度にたくさん摂っても身体は使い切ることができません。使い切れなかった分は、筋肉になるのではなく、体脂肪として蓄えられていきます。なので、3食以上にサプリメントでさらにたんぱく質のみを多く食べる必要はありません。

 

貯蔵量の少ないグリコーゲン。糖質の残った分は脂肪になる

糖質やグリコーゲンはたくさん摂った方がいいんですか?

限度はあります。ただご飯やパンなどの主食を食べすぎることを心配されるよりも、ジュースや甘いお菓子などに含まれる砂糖をたくさん食べることによる糖質の摂りすぎが心配です。

ただ糖質は摂りすぎると脂肪になるんですよね?

そうですね。
一回に身体が利用できる量というのがたんぱく質だけではなく、糖質にもありますのでそれをオーバーしてしまうと体脂肪として貯蔵します。

グリコーゲンは貯蔵できる量に限界があるので、残った分は脂肪として貯金しようということですね。

そうなんです。しかも貯金するとなかなか崩さないお財布のひもが固い人になります。
3食しっかりと食事をまずは食べていただければ、運動に必要な「糖質」も「たんぱく質」も十分に摂ることができます。

 

インタビュアーあとがき

今回のインタビューで運動とグリコーゲンの関係について様々なお話を聞くことができました。糖質(グリコーゲン)制限が様々なメディアで取り上げられていますが、それは人間が活動するには必要不可欠なもので、制限することで大事にしたい筋肉すら失うことになるとは思ってもいませんでした。
(インタビュアー:太田善隆)

参考文献

1)厚生労働省:日本人の食事摂取基準(2015年版).2014
2)文部科学省:日本食品標準成分表2015年版(七訂).2014
3)樋口満編著:新版 コンディショニングのスポーツ栄養学.市村出版.2011
4)田口素子・樋口満編著:体育・スポーツ指導者と学生のためのスポーツ栄養学.市村出版.2014
5)小林修平・樋口満編著:アスリートのための栄養・食事ガイド.第一出版.2010
6)臨床スポーツ医学編集委員会 編:臨床スポーツ医学 スポーツ栄養・食事ガイド2009 Vol.26臨時増刊号.文光堂.2009.11.1
7)日本栄養・食糧学会監修、香川靖雄編著:時間栄養学 時間遺伝子と食事のリズム・女子栄養大学出版部.2009
8)上代 淑人 監訳:イラストレイテッド ハーパー・生化学 原書27版 .丸善株式会社 .2007
9)Bill I.Campbell Marie A. Spano :NSCA’s Guide to Sport and Exercise Nutrition :National Strength and Conditioning Association , 2011


取材協力:Unit(ユニット)

アスリートにむけて様々な方法で競技力を向上させるトレーニングプログラムを提供しています。
形だけの体力トレーニングやフィットネスとは異なり、“いかに競技成績を向上させるか”を念頭に置いたプログラム作りを行なっています。
URL:http://team-unit.com