実は怖い、糖質制限ダイエットのリスク!?管理栄養士がすすめる最も効率の良いダイエット法とは?

実は怖い、糖質制限ダイエットのリスク!?管理栄養士がすすめる最も効率の良いダイエット法とは?

食べたいけど痩せたい人必見!食事制限の前に減らすべき3つの間食 読む 実は怖い、糖質制限ダイエットのリスク!?管理栄養士がすすめる最も効率の良いダイエット法とは? 1 分 【プロ監修】本気でダイエットを成功させる運動と食事の具体例

実は怖い、糖質制限ダイエットのリスク!?管理栄養士がすすめる最も効率の良いダイエット法とは?

2017.12.15(最終更新:2023.08.22)

前回のインタビューでは食事制限の前に減らすべき食べ物について公認スポーツ栄養士さんにお話をうかがいました。食事制限する前に減らすべきはお酒、ジュース、おやつの3つだそうです。
では最近、よく耳にする糖質制限ダイエットは公認スポーツ栄養士・管理栄養士さんの目にどのように写っているのでしょうか。やはり糖質・炭水化物は控えた方がいいのでしょうか?
ダイエットについては様々な情報が蔓延していますが、食事とカラダづくりのプロの視点から具体的な話を聞くことができました。

 

小嶋理恵子先生のプロフィール

アスリートにトレーニングプログラムを提供する「Unit」所属の管理栄養士であり公認スポーツ栄養士。効率的で健康的なカラダづくりを食事・栄養の側面からサポートしている。

 


糖質制限ダイエットは本当に効果があるのか?

ダイエットと食事の関係についてお話しを聞かせてください。

最近、糖質制限ダイエット、低炭水化物ダイエットなど様々な名前で呼ばれる糖質や炭水化物の摂取を制限するダイエットが大流行しています。スポーツ現場においても、特に若い女性アスリートに糖質制限ダイエットを取り入れている方を多く見かけます。しかし、これらのダイエット理論の中で悪者とされる糖質・炭水化物は、実は身体にとって一番といっても過言ではないほど、とても重要な栄養素なんです。
糖質と炭水化物を混同して使われている方が多いのですが、私たち栄養士の世界では、ヒトの消化酵素で消化される「糖質」と消化されない「食物繊維」を合わせて「炭水化物」と呼んでいます。定期的に運動を行う方やスポーツ選手にとって、糖質はトレーニングを行うための重要なエネルギー源となります。糖質・炭水化物を極端に制限することは集中力、持久力に影響を与え、トレーニング効果を減らすだけでなく、けがや疲労にもつながりやすくなります。これらのことから、運動をされる方に糖質制限ダイエットはおすすめしません。

なぜこんなに糖質制限ダイエットが流行っているんですか?

事実、糖質・炭水化物を極端に減らすと短期間でかなりの体重が落ちます。つまり、数値や外見など目に見える変化のスピードが速いというのが、流行している一つの理由ではないでしょうか。
また、糖質を多く含む食品は、主食と呼ばれるご飯やパン・麺類にあたり、食事の中で最も多い量を食べています。そのため量を減らしやすい食品であるということも理由の一因ではないかと思います。
糖質制限ダイエットの減量効果は、糖尿病の患者をはじめ様々な症例から実証されています。ただし、これらは治療目的で行われており、健康な方が医師や管理栄養士のサポートなしに自己流の糖質制限ダイエットを安易に取り入れることは、身体へのダメージを考えるとお勧めすることはできません。

自己流の糖質制限ダイエットの危険性についてもう少し詳しく教えてください。

自己流で危険な糖質制限を行っている方には、大きく2つの傾向が見られます。
1つは減量を意識しすぎて糖質だけでなく食事量全体を減らしてしまい、摂取カロリーを極端に減らしすぎてしまっているケース。 もう一つは、糖質以外なら何でも食べたいだけ食べてよいと間違ったとらえ方をして、逆にたんぱく質や脂質を摂りすぎることによる摂取カロリーオーバーとなっているケースです。
インターネット上を探せば、いかに糖質制限ダイエットが素晴らしいのかという理論や効果に関する情報はたくさん入手できますが、実際に自分の身体にはどの程度の糖質制限が必要で、どの食材をどのぐらいの量で、どう食べればよいのか、といった具体的な食生活に反映した情報が少なく、必要な情報がなく混乱した状態に陥っているように感じます。
また、糖質はたくさん入っているがビタミンなどの栄養が豊富な野菜類まで制限しているにもかかわらず、エンプティー・カロリー(体に必要な栄養成分はほとんど含まれていないのに、カロリーは高い)と呼ばれるお酒はウイスキー・ブランデーなら普段と同じ量を飲んでも構わないとしている理論もあり、何を目的にこのダイエットを取り入れているのかわからないものもあります。
さらに、食事量全体を減らしているケースでは、このダイエットを長期間続けることによって、摂食障害へと発展する可能性が高くなり、特に注意が必要です。

 

糖質制限ダイエットの身体への影響は?

短い期間で減量効果が実感できるのはとても魅力的ですよね。なぜすぐに減量効果が表れるのですか?

身体に糖質・グリコーゲンを蓄える際に、グリコーゲン1に対して3~4倍の水を必要とします。炭水化物を減らすと、蓄えていたグリコーゲンも減るため、糖質・グリコーゲンと一緒に水も減っていくので大きな体重減少が起こっているように見えます。
気を付けていただきたいのが、この体重減少は身体から水が抜けているだけで、本当に減らしたい体脂肪が減っているわけではない点に注意が必要なのです。

糖質制限することで他にはどのような影響がでるんですか?

糖質・炭水化物を極端に減らしてしまうと、疲れやすくなったり、集中力が欠けてしまったりします。また、長期間、糖質・炭水化物を極端に減らす、食事量全体を減らす生活をすると、めまいや頭痛などの慢性的な体調不良に陥る場合があります。
さらには、インタビューの初めにも伝えましたが、糖質が不足すると身体は筋肉を分解して補おうとしますので、筋肉量が減ってしまうという危険性があります。

本当に減らしたい体脂肪が減らずに筋肉が減るのは、やはり困りますね。なぜ糖質を減らしても身体は脂肪を燃やしてくれないんですか?

糖質は車でいうところのガソリンでもありブースターの役割を担っています。つまり糖質がなく脂肪だけでは、燃やそうとしても火がつかない、その結果、脂肪が燃えない(=エネルギーとして使えない)ということになります。
私たち管理栄養士は、糖質代謝と脂質代謝の関係をよくロウソクで例えます。
芯が糖質、周りのロウが脂質、炎は代謝が回っている状態を表しています。まず、ロウソクは芯が無いと火がつかないですよね。つまり少量でもロウソクの芯にあたる糖質が無いと、周りの脂肪は代謝されないのです。

 

糖質・炭水化物を減らすと生活習慣病になりやすい!?

脂肪を燃やすために糖質が必要だという話は初めて聞きました!
糖質・炭水化物は主食に多く含まれているんですよね。ただ、それ以外の食材にも糖質・炭水化物は含まれているから、あまりご飯は食べなくてもいいと聞いたことがあるんですが?

もちろん、主食以外の食材の中にも確かに糖質・炭水化物は含まれています。
ですが、ご飯の代わりにそれらの食材だけで一日に必要な炭水化物量を補うには、かなりの量を食べる必要があります。その結果、糖質以外の栄養素もかなり摂取してしまうことになります。
残念ながら、主食を他の食品で置き換えても、主食をしっかりと取り入れた食事以上に栄養バランスの良い食事にはなりません。

実際にはどの程度主食を食べたらいいのですか?

身体にとって必要な栄養素は大きく分けて5つ、炭水化物・タンパク質・脂質・ビタミン・ミネラルがあります。この中でエネルギーを産み出すことのできる栄養素は炭水化物・タンパク質・脂質の3つだけになります。
1日に必要な総エネルギー量を炭水化物から約60%、タンパク質から約15%、脂質から約20~25%の割合で摂取することが理想です。
20代一般女性、週2回程度、1回に1時間程度のジョギングを行っている方の1日の必要エネルギー量は1950kcalと言われています。1日に必要な炭水化物量は総必要エネルギー量の約60%ですので、約290g。3食に均等に振り分けると、1回の食事から約95g~100gの炭水化物を食べる必要があります。
ご飯茶碗軽く1杯(150g)中に約56gの炭水化物が含まれており、肉や魚などのおかずにも少量ではありますが、炭水化物が含まれていますので、主食のご飯としては1回に約150g~200g程度の量を食べるといいかと思います。

主食以外の食材に含まれる炭水化物は、例えばジャガイモ中1個(約100g)中に約18g、リンゴ中1/3個(100g)中に約15.5g、豚もも肉約100g中に約0.2gそれぞれ含まれています。 主食であるご飯からいかに効率よく炭水化物を摂取できるかがお分かりになるのではないでしょうか。

ご飯150g~200gですと、かなりのボリュームにはなりますね。普段からそこまでしっかりとご飯は食べていないです。

そうですね。
炭水化物を約60%、たんぱく質約15%、脂質約20%程度を摂取できる食事のバランスは、いわゆる和食の定食を想像していただければよろしいかと思います。
どうしても、おかずがたくさんある方が豪華な食事に見えるかと思いますが、実際には主食であるご飯をしっかりと食べることの方が重要で、おかずはそこまで多く食べる必要はないんですよ。

炭水化物を減らす、抜かしてしまうとおかず中心の食事になってしまいますね。

とてもいいところに気が付かれましたね。
特に注意していただきたい点は、提示している数字が割合(%)であるということなのです。
つまり、炭水化物の割合を減らすと他の割合がどんどん増えていくのです。
炭水化物を減らす、抜かすと、一日に必要なエネルギーのほとんどをたんぱく質や脂質から補給するような形になります。
実際には主食を減らす、抜かすと、必然的におかずが増え、特に肉類が増えやすくなります。その結果、肉類に多く含まれる飽和脂肪酸やコレステロールの摂取量が増え、動脈硬化や高コレステロール血症など循環器疾患のリスクも増えてしまいます。

ダイエット目的のつもりが、その弊害として血がドロドロになったりするわけですね。

そうですね。さらにおかずが中心の食事になると、塩分量も増え、高血圧などの生活習慣病にかかりやすくなります。
「糖質制限ダイエット」の場合、糖質が含まれている食品はすべて食べないという極端な方法をとられている方もいます。その場合、糖質が多く含まれている穀類や野菜、果物から本来摂取されるべきビタミンやミネラル、食物繊維が不足し、その結果、慢性的な栄養不足による体調不良を引き起こす可能性もあります。

 

流行りの食事ダイエットは4種類に分けられる

糖質制限ダイエットの弊害として、生活習慣病になりやすくなるというのは大変驚きです!流行りのダイエットは他にもいろいろありますが、何が違うんですか?

流行のダイエットは本当にいろいろな種類がありますよね。
その傾向を考えると大きく4種類に分けられます。
1つ目は「糖質・炭水化物を食べないダイエット」です。 例えば、グリーンスムージーダイエットというものがあり、これはご飯の代わりにグリーンスムージーを飲みましょうというダイエット方法だそうです。色々な名前や食材がその時その時で挙げられますが、基本は炭水化物を食べずに他の食材に置き換えるダイエット方法になります。
2つ目が「サプリメントダイエット」でサプリメントを利用して痩せる方法。
3つ目が「単品食品ダイエット」と言って他のものは一切食べずに、キャベツだけやリンゴだけなど、特定のものだけを食べるダイエット方法。
4つ目が「水抜きダイエット」になります。

ダイエットドリンクとかダイエットに関係する食品などはどれに含まれますか?

ダイエットドリンクやダイエットに関係する食品のほとんどがサプリメントとして販売されていることが多いので、2つ目の「サプリメントダイエット」に区分されるのではないでしょうか。

今までお話してきた「糖質制限ダイエット」は今までに例をみないほど長期間、流行が続いていますね。

 

ダイエットの基本は変わらない。定期的な運動と健康的な食事に尽きる

海外のトップモデルや有名スポーツ選手が取り入れているダイエット方法を積極的に取り入れることについてはどうですか?

海外だけでなく国内の著名人からもダイエット情報がたくさん発信され、それが今の日本のダイエット文化を形成しているといっても過言ではありません。
しかし、個人個人で、生活習慣も運動量も異なります。もちろん、本来持っている体質も異なることでしょう。極端な食事制限がその方の性格や食生活、体質にマッチし、素晴らしい減量効果を発揮したとしても、それらの1つ1つが特例であると考えるべきだと思います。

日本人の身体が西洋化していると言われていますが。

そうではありません。
もちろん、日本人の身体も昔と今とを比べると、かなり変化してきています。
しかし、それは体質が西洋人へと近づいてきたというわけではありません。日本人の遺伝子が持つ本来の体格へと変化しているだけです。

日本の食文化が大きく変わってきたのは、この数十年です。そのわずかな時間の中で食事は欧米化しましたが、日本人が本来持つ体質までは変化をしていないように思います。もちろんあと何千年と経ったら、全人類が同じような体格・体質になるかもしれませんが、人間の身体の本質が変わるのには気が遠くなる時間が必要になります。

やはり流行のダイエット方法よりも初めに教えていただいたダイエットの基本を忠実に守る方がはるかに早くダイエットができるということですね。

効果が現れるのに少し時間を要しますが、筋肉量を増やして確実に脂肪を落とし、かつ将来の健康までを考慮すると、基本に忠実なシンプルなダイエット法が一番効率の良いものであると思います。
減量の基本は、食べた量(摂取カロリー)よりも動いた量(消費カロリー)を多くすることです。現代人の一番の問題は「運動不足」です。まずはしっかりと自分のペースで続けていける運動を積極的に取り入れましょう。
また、世界遺産となった和食で提唱される一汁三菜が、日本人の体質に一番合った食事といえます。カロリーだけでなく栄養バランスを考えた食事を積み重ねることが、結果として効率的なダイエットにつながっていきます。

有名な方が取り入れている、流行だからなど、目先の減量のみをうたったダイエットに安易に飛びつかず、長い目で健康的にかつ活動的に過ごすことを目的にした健康的な食生活をぜひ取り入れていただきたいと思います。 

 

 

まとめ

今回、焦点を当てた「糖質制限ダイエット」。短期間で減量効果が表れるその裏で、栄養バランスが崩れた食生活を長期間続けることにより生活習慣病への罹患リスクが高まることには大変驚きました。
様々な食事ダイエット方法が提案され、身体に悪い食材は一切取らず、身体によいとされる特定の食品をいくら食べてもよいなど食べたカロリーを無視した方法が蔓延しています。
1つで身体によいとされる食材はなく、やはり減量の基本は、食べた量(摂取カロリー)と動いた量(消費カロリー)のエネルギーバランスを整えることだと感じました。
また、世界遺産となった和食は、単に伝統を守ることが重要視されているだけでなく、一番日本人の体質に合った食事であることを再認識しました。
定期的に続けられる運動を取り入れ、和食を取り入れた日本人らしい健康的な食事を取り入れることが、ダイエットへの近道ではないでしょうか。

(インタビュアー:太田善隆)

参考文献

1)厚生労働省:日本人の食事摂取基準(2015年版).2014
2)文部科学省:日本食品標準成分表2015年版(七訂).2014
3)樋口満編著:新版 コンディショニングのスポーツ栄養学.市村出版.2011
4)田口素子・樋口満編著:体育・スポーツ指導者と学生のためのスポーツ栄養学.市村出版.2014
5)小林修平・樋口満編著:アスリートのための栄養・食事ガイド.第一出版.2010
6)臨床スポーツ医学編集委員会 編:臨床スポーツ医学 スポーツ栄養・食事ガイド2009 Vol.26臨時増刊号.文光堂.2009.11.1
7)日本栄養・食糧学会監修、香川靖雄編著:時間栄養学 時間遺伝子と食事のリズム・女子栄養大学出版部.2009
8)上代 淑人 監訳:イラストレイテッド ハーパー・生化学 原書27版 .丸善株式会社 .2007
9)Bill I.Campbell Marie A. Spano :NSCA’s Guide to Sport and Exercise Nutrition :National Strength and Conditioning Association , 2011